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『詩音 OF THE DEAD』ムロヨシ・タカシ

読書 漫画

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ゾンビ物というのは近年なかなか盛り上がったジャンルであり、我が国でも数年前にコミック・ライトノベル界隈で作品数が増えた時期がある。一方で雑誌『ユリイカ』では「ゾンビ物がブームというけど、売り上げからは必ずしもそうとは言えない」という論考も掲載された。

今となっては正直、ゾンビ物が2000年代にブームを迎えたのか、そうでなかったのか知ったこっちゃないのだけど、このジャンルがある程度の市民権を得たことは否定しようがないのではなかろうか。

『詩音 OF THE DEAD』もゾンビ物である。うら若き乙女ゾンビが主人公というと、たとえばライトノベルでは『妹がゾンビなんですけど!』がある。

妹がゾンビなんですけど! (スマッシュ文庫)

妹がゾンビなんですけど! (スマッシュ文庫)

これは非業の死を遂げた女子中学生が、天才マッドサイエンティストの研究によりゾンビとしてよみがえる。兄は最初それを喜ぶが、徐々に妹はゾンビとしての本能、捕食衝動に目覚め苦しみ始めるといった内容。何かこれだけ書くと真面目な話っぽいが基本はコメディだ。

『詩音 OF THE DEAD』も基調はコメディである。一見すると普通の人間と見分けの使いない女の子、しかし実はゾンビの東海林詩音が主人公と恋に落ち、ドタバタ学園ライフを過ごす。詩音のゾンビ化した経緯や理屈は割とアバウトというか、あんまりツッコんでも仕方ないんだろうなという設定。それよりゾンビと人間のドキドキ恋愛模様やスクールライフを楽しむことに主眼が置かれているのだろう。

と言いつつ、詩音のゾンビ描写は結構エグかったりする。

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腸が飛び出すくらい、この漫画では軽いジャブだ。何せ第1話の2ページ目には脱腸しているのだから。

これだけゾンビであることを前面に出されると、当然ながら周囲の人間は引く。近寄りがたいと感じ距離を取るのだが、そこをものともせず越えてくるのが主人公とクラスメイトの小野葉。

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さらに新たなゾンビの存在も発覚して……。

最終回はそうきたかという感想。確かに詩音がゾンビ化した経緯や、ゾンビとしての活動限界などを作風的に軽く流してしまったため、落としどころとしてはそれが有力な選択肢だよなと感じた。ただ、その直前までドタバタ学園コメディだったので落差にやられた。

コメディの底に隠されたゾンビとして生きること、人とは違う存在になってしまったことの悲哀や、それでも生きるという詩音の選択が未来につながれる最終回だった。

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