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『学園カゲキ!』山川進

読書

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全6巻というコンパクトさもあり、2日でシリーズ通読したので感想を。

『学園カゲキ1』

シリーズ1作目。

街そのものが映像作品を撮影するために用意された行政特区、そこに作られた学園に通うスター候補生たちの日常物。

設定の妙としてはラノベにありがちな"突飛な日常描写"が、すべて撮影だから、カゲキ市だからで説明できることですかね。普段からカメラで撮られている彼らは、目立ったもん勝ちの精神で生きてます。

そこに目立つことは好きじゃない自称平凡な主人公が入学してしまって……という導入。話の大枠は某映画を連想させますが、タイトル言ってしまうと即ネタバレなので実際に読んで確かめてください。

『学園カゲキ2』

1作目がそれなりにオチついて終わったので、どう続けるのかと思ったらオーソドックスに繋げてきました。

1作目で恋仲になった主人公とヒロインの間に、ヒロインの親友が入ってきて、撮影中のドラマの展開や進行とシンクロしながら話が進むと。

2巻目にして早くもシリーズ継続するの苦しそうだなと思ったのは、時間の経過が早すぎるためですね。カゲキ市はCSに専門チャンネルを持ち、そこでは生徒や教員の作った作品が流され続けているという設定あります。

1作目も2作目も撮影中のドラマと現実パートが歩調を合わせるように進みます。一見するとこれ2つの話がシンクロしながら盛り上がって良い演出に感じられますが、ちょっとした話を進めるのに現実パートの時間1週間飛ばさないといけないデメリットも存在します。

なので新入生だった主人公たちは1作目で早くも2年生に進級し、2作目でも作中で半年経過します。1作目の冒頭に出てきた騒がしい生徒会長も、キャラ確立する前に2巻では既に卒業済み。

主人公の1学年上に話を引っかき回す杏子というトラブルメーカーいるんですが、これまでのペースで書き続けると彼女も次の巻で早々に舞台を降りてしまう。

ここからシリーズの苦闘が始まります。

 

『学園カゲキ3』

ドラマと現実パートをシンクロさせながら語るのは難しい、またシリーズ開幕当初の主人公・拓海とヒロイン九月との物語は一段落ついてしまい、これ以上は広げられそうにない。

作者は物語の主人公を拓海から彼の親友役だった雅弥に変更します。

これまで語られなかった雅弥の過去、彼がなぜカゲキ市に来たのかと、シリーズ1作目から度々口にされてきた九月の家庭の事情、家計が苦しい理由なども明かされる。

この巻は不評だったのか4巻あとがきで「泣かせようとしてるのが鼻につくと言われました」と作者自らネタにしています。禁断の死にネタに手を着けてしまったためです。

『学園カゲキ4』

3巻が不評だったためか4巻で大きく軌道修正を図ります。時間を約半年巻き戻し、特定の主人公は出さず同じ時間、同じ場所を複数の人物から語り直す形式。

AがBに片思いして、BがCに片思いして、CがDに片思いし、DはEに、EはAにと円環を描く人間関係で語られます。

Aの視点ではDがなぜそんな行動に出たか分からないが、Dの視点から語り直されることで話が繋がるといった具合です。

ただ学校の中だけで完結する話なのと、前作の影響かブラックな話はできず、コメディ一辺倒なのがパンチに欠けました。

『学園カゲキ5』

完全に主人公は雅弥になってます。

拓海も一応は出てきますが出番少なく、巻頭のカラー絵もありません。

話はプチミステリーです。新作ドラマの主人公を賭けひとつの家に集められた男女6人。共同生活を過ごしながら、犯人役と思われる人間を指名する。

指名は毎日午後9時。指名された人間は犯人であろうがなかろうが脱落。犯人を言い当てられば、その時点で生き残っていた人間は全員主役。間違えると毎日1人ずつ減っていく。

ゲーム部分は粗いと言えば粗いんですが、前2作に比べれば持ち直した感あり。ただ遅かった。

『学園カゲキ6』

シリーズ完結。

不況から学園のスポンサーになっていた企業が撤退。今の規模で運営を続けるのは困難と悟った学園は、規模縮小のため生徒のリストラを開始する。

全校生徒をAチームとBチームに分け、勝負して勝った半数だけを残す。

拓海は雅弥、九月と別のチームになってしまい、どちらかが学園を去ることに。

打ち切られたんだろうなと感じる展開ですね。このシリーズ序盤を駆け足で時間進めてしまったせいか、いろいろなキャラクターや設定が捨てられてしまってる部分あります。

1巻の冒頭から中盤にかけ登場し、5巻では「天才だ」と名前だけが語られる姫先輩とか、普段は平凡だがスイッチ入ると天才的な演技力を発揮する拓海の設定も、掘り下げられる前に1巻で1年ちょい、2巻で半年経過してしまいました。

その中にあって1巻では九月の先輩役でしかなかった杏子が、最終巻ではこいつがメインヒロインなんじゃね?と思う活躍です。

完結巻らしく拓海と九月の物語になるかと思いきや、オチは雅弥と杏子に持って行かれました。

杏子いいよ杏子。

完結した後から俯瞰すると、長期シリーズを続ける難しさや作者の苦悩が見えて、また別な面白味がありました。

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