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『マカロン大好きな女の子がどうにかこうにか千年生き続けるお話。』からて

読書

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セールでKindle版が安くなっていたので試しに読んでみたんだがタイトル長っ!

『マカロン大好きな女の子がどうにかこうにか千年生き続けるお話。』あらすじ

「そんなわけで、千年生きるにはどうしたらいいの?」
カロン大好きなメルヘン少女が千年生き続けるお話や、コンクリートとお話ができる女の子のお話、不思議な宇宙人ぱらぽろぷるん君の恋のお話、そしてセミ王国からやってきたセミ子のお話……。
ネット小説界の新星と、ニコニコ動画の人気イラストレーターが紡ぐ連作短編が登場。
幸せで、切なくて、愛しい。そんな、ちょっと不思議な物語。

今回は全体を大まかな二部構成に分けます。

前半は各話の紹介と説明。後半にネタバレ祭りしながら全体の構成について話します。

それでは行ってみましょう

 

各話紹介

カロン大好きな女の子がどうにかこうにか千年生き続けるお話。

表題作。マカロン大好きメルヘン少女には「みーこ」という友達がいました。みーこは「明日話があるの」と言ったまま忽然と姿を消してしまいます。やがて彼女は1000年後の世界に飛んでしまったらしいと分かるのですが、なんでそんなことになったとかの理屈は一切ありません。とにかくメルヘン少女はみーこに再び会いたい、彼女が話したいと言っていたことが何なのか知りたくて1000年生きる決意をします。

大人たちは人間は1000年も生きられないんだよと諭すのですがマカロン大好き少女には分かりません。困り果てた大人たちは彼女を不老不死の研究機関に紹介します。そこで与えられた薬に奇跡的な適合を見せたマカロン少女は不老不死となり、みーこが飛ばされた1000年後まで生きることを目標に出会いや別れ繰り返しながらゆるふわな毎日を送ります。

彼女はコンクリートとお話ができる

不治の病にかかった高校生の僕は学校のいじめっ子を釘バットで殴り教科書やノートをビリビリに破いて捨てると、家族には内緒であてもないまま夏を怠惰に過ごします。暇なら行ってくればと母親に勧められた中学の同窓会へ顔を出す。友達の多くないタイプだった主人公は数少ない友人たちが欠席したため独り暇を持て余していた。すると会場にはもう一人、暇を持て余し唐揚げにレモン絞っている女がいた。彼も対抗しエビフライにレモンを絞る。

二人は軽い冗談とノリで互いを山田太郎山田花子と名乗り仮名のまま何となく遊ぶようになる。エッチな夜の店で働き彼氏と同棲する花子。サービス精神旺盛すぎて店をクビになった彼女と一緒に太郎は子供時代を思い出し秘密基地作るのだった。

ぱらぽろぷるんぺらぽろぱらぽん

収録作の中で最もふざけてるかに思われるが何気に一番熱い恋愛物じゃないかと。

エイリアン同士の異種族間カップルの話なのだが宇宙規模な恋愛のため時間の経過が人間とは違う。『マカロン大好きな女の子がどうにかこうにか千年生き続けるお話。』は人間がなんとか1000年生きる話だし、『彼女はコンクリートとお話ができる』に至っては明日があればという感覚なのだが、この話ではちょっと拗ねて連絡を取り合わなくなったら簡単に100年が経過する。

お姫様と一般庶民。それも種族が違う者の略奪婚です。

嘘つきセミと青空

理系の大学に進学したが本当は入りたいところでなかった。密かに再受験を考え猛勉強する主人公の元に「むかし助けてもらったセミです。セミ王国から恩返しに来ました」と少女が来訪する。どう見ても人間なセミ子の言い分を真面目に取り合わずそういう設定なのねなどと小馬鹿にしていたが、彼女と過ごした7日間で固まっていた心が解れ次第に惹かれていくのを自覚する。

しかし別れの時は訪れて。

カロン大好きな女の子がどうにかこうにか千年生き続けるお話。全体の構成(ネタバレあり)

この本は紹介文に連作短編とあるように話は繋がっています。表題作でマカロン少女が生きている間に地球は不治の病が流行し人口を減らしました。地球を救ったのはお菓子目当てに献血した彼女の血でしたが、偶然にも人類で初めてマカロン少女の輸血により病が治った少年はこんな風に書かれています。

最初に救われた少年はどこの誰かも分からない恩人に対して感謝の言葉を述べた。その少年に退院してから最初にやりたいことを聞くと「秘密基地に行きたいかな」なんて、よく分からないことを言って笑っていた。

これが後の山田太郎です。

『ぱらぽろぷるんぺらぽろぱらぽん』に登場するエイリアンも初出は表題作です。100体に分裂し感覚や思考の統合された存在となったエイリアンは人類の殲滅を図り地球に攻撃しかけますが、これには天寿をまっとうするまで連れ添った妻の遺骨を誰もいない静かな惑星に蒔いてやりたいとする思いがありました。マカロン少女により偶然にもその願いは頓挫するわけですが。

2作目と3作目は1作目のスピンオフ作品と言えます。

唯一この連なりから外れているのが4作目の『嘘つきセミと青空』ですが私はこの主人公が先の3作を書いたと見ています。

『嘘つきセミと青空』にはセミ王国の決まりで7日間しか恩返しできないとセミ子が言う別れのシーンあります。ここで主人公はセミ王国を舞台にしたセンチメンタルな恋愛小説を書いていると以前に話していたセミ子に対し、実は自分も作家になりたいと思っていてそのために再受験して文学部に入り直すんだと告白します。

「だから、再受験してるんだ。笑っちゃうだろ。才能もあるかどうかも分かんないのに、ずっと理系だった奴が小説家になるために文転だなんてさ。小説って言ったって、自分が何を書けるのかも分かってないし、書いてみたいだけなのに。自分でも分かってる。自分なんて普通の人間だってことは」

俺は自分でも何を言っているのか分からなくなっていた。俺は怖くてセミ子の方を見られなかったけど、それでも続けた。

「だけど、最近ちょっとだけ変わったんだ。少しだけ書きたいことが見えてきたんだ。まだおぼろげなんだけど、それでも見えてきたんだ。それは、セミ子のおかげなんだ」

自分でもびっくりの饒舌ぶりだった。

セミ子の体から力が抜け、細い腕が俺の腰を抱きしめた。

「セミ王国なんか抜けだしてまた会おう。俺も来年の今頃までには小説を書くから、そしたら会おう」

「はい」

しかし願い叶わず。この時点でまだ主人公はセミ子がセミの変化だと信じてません。無事第一志望に合格し約束の夏が近づいたころ彼女の死の報せと共にセミ王国の同族が接触してきます。

そこですべての真実とセミ王国の住人に課せられたルールを知ります。

その一。私たちは本来の姿なら千年の命を持っています。

その二。望なら私たちは夏の間だけ人間の姿になることができます。

その三。一度人の姿になると、私たちは七日程度で死んでしまいます。

その四。太陽が出ているうちに外へ出ると私たちは死んでしまいます。

『マカロン大好きな女の子がどうにかこうにか千年生き続けるお話。』

1000年の命を持っていたセミ王国の住人から『マカロン大好きな女の子がどうにかこうにか千年生き続けるお話。』を着想したと考えられます。またマカロン少女の前から約束だけ残し姿を消した「みーこ」はセミコから取ったとも考えられます。

日本からはとうとう春夏秋冬という概念が消え去って季節は「暑い季節」と「ちょっと暑い季節」の二種類になっていた。

ここでは夏以外の季節が消え永遠に終わらない夏が志向されています。

西暦2456年。異常発生したセミの声がみんみん辺りに響いている。そんな夏の日のことだった。

セミの声は全体を貫くキーワードになっていますが目立つ所でピックアップ。

「師匠! 今日はマカロン持って来ました!」

「でかしたぞ! お礼に砂あげる」

「ありがとうございます師匠! こんなにも素晴らしいものを貰えるなんて僕は最高に幸せ者です!」

カロン少女は長く生きてる中で1度だけ弟子入り志願を受け入れます。出会ったころ少年だった弟子もやがて成長し世界的な科学者となって外宇宙探索に出て戻らぬ人となるのですが、砂は第4作でも登場します。夏祭りに行こうと主人公に誘われたセミ子は祭り初体験前の興奮する気持ちをこう表現します。

「楽しみだよ! 砂遊びをする前日より楽しみ!」

『彼女はコンクリートとお話ができる』

夏休みに再会した少女と秘密基地を作る話ですが、人間に化けたセミ子は種族にかけられた呪いのため夜間しか活動できません。反対に彼氏と同棲している花子は日中しか太郎と遊べず、セミ子との関係を逆にした、彼女が青空に持っていた憧れを投影したキャラクター設定と言えます。

太郎は友達のいない同窓会で独りこんなことを言います。

「こんなことなら河原で形の良い石探してればよかったなぁ」

セミ子の好きなものがマカロンと綺麗な石であることは彼女自身の口から語られます。

あれも駄目これも駄目と恩返しの願いごとが叶わない主人公は「何ならできるの?」と訊き、セミ子の答えが「形のいい石を見つけるのは得意だよ」でした。

呪いによって夜間しか出歩けないセミ子を心配する主人公に護身用のスタンガン持っていると言う彼女。しかしバッグから出てきたのはマカロンでした。

2作目の彼女はタイトルにもなっているとおりコンクリートと話ができると主張しています。同窓会の夜に二人で歩きながらそんな話になったのです。

「コンクリートとお話ができるなんてすごいね」

彼がそう褒めると、彼女は「えへへー」と笑いながら照れていた。

高校を中退してから色々あって、なんか知らないけどいつの間にかコンクリートとお話ができるようになっていたのだとか。

コンクリートと話すは4作目にも登場します。夏祭りにやってきたセミ子は転んでしまうのです。

「もー。コンクリート硬いよ。コンクリートとお話ができれば柔らかくなってもらって膝をすりむかないで済むのに!」

そして直後にセミ子がポケットから緑色の石を取り出し主人公に渡します。

ぱらぽろぷるんぺらぽろぱらぽん

この話はエイリアンの恋愛物ですから他の作品とは少し毛色違うのですが繋がっている部分もあります。まず2人は異種族であり彼よりも彼女は短命であることが義務づけられています。

許嫁との結婚が決まった彼女は事情を知らせず最後のデートに彼を呼び出しますが行き先は日光浴でした。セミ子が絶対に行けない、行きたかったであろう場所です。

挙式に乗り込んだ彼は皆が見てる前で告白します。

「ぺろぽろぽらぽんちゃんのツンデレなところも大好きだ! 照れるとすぐエメラルドグリーンに肌を染めるそんなところも大好きだ! にゅるにゅるした触手も大好きだ! 全部好きだ! 嫌いなところなんかない! 結婚してくれ!」

ぺろぽろぱらぽんちゃんの顔は、みるみるうちにエメラルドグリーンに染まっていく。

その姿を見て、僕は心の底から幸せを感じた。

セミ子が最後に遺した石の色が緑だったのと掛けてるんでしょうか。

未来の約束

各話に共通して出てくるのが何か将来のことを約束するシーンです。

『マカロン大好きな女の子がどうにかこうにか千年生き続けるお話。』では、みーこがマカロン少女に「明日話がある」と言います。その明日を今日にするため少女は1000年生き続けるのです。『彼女はコンクリートとお話ができる』の主人公は公園で吐血し病院に運び込まれます。

「ねえ、明日いっしょに秘密基地作れないの?」

「うん。明日はちょっと難しいかも」

「そっか……」

いつもは天真爛漫な彼女が、同窓会の時みたいに元気なく俯いていた。彼はそんな彼女を見て、精一杯明るい声で話しかける。

「明日は無理だけど、僕が元気になったらまた秘密基地作ろう」

『ぱらぽろぷるんぺらぽろぱらぽん』にも「アンタ来年ひま?」と彼女が尋ね約束を取り付けるシーンありますね。

これは祭りの夜に「セミ王国なんか抜け出して来年また会おう」と約束したことに掛かっているのでしょう。王女を連れ出し誰もいない惑星で二人だけの挙式をあげるのも同様です。

作者がセミ子である可能性

3作が4作目の登場人物によって書かれた可能性は高いと思いますが主人公だけでなくセミ子も小説を書いていました。そのためどちらが書いたと特定するにはもう少し見ていく必要あります。

「えっとね、セミ王国で起こるすごく不思議なセンチメンタルラブストーリーだよ!」

長い髪をふわりと揺らしながら一生懸命身振り手振りを交え、心底楽しそうに今書いている小説の話をしていた。

「他にもへんてこな宇宙人のお話とか、女の子がお腹いっぱいマカロン食べるお話とかも書こうと思ってるんだ。まだ書けてないんだけどね、いつかぜーったい書くんだ!」

ここを読むとセミ子の中には既に着想があったこと覗えます。しかし「いつか書く」と言うに留まっていること、物語のラストで主人公と自分の生活を書いた小説が発見されたこと、セミ子に残された時間が少なかったことなどから彼女にすべての話を書くのは不可能であったと推察します。また各話の冒頭と終わりの文にも注目したいと考えます。

カロン大好きな女の子がどうにかこうにか千年生き続けるお話。

冒頭:目を開けるとそこには、突き抜けるような青空が広がっていた。

末文:繋いだその手のぬくもりだけが、彼女が千年前からずっと求めていたものだったのだ。

彼女はコンクリートとお話ができる

冒頭:求めてもいない手のぬくもりを感じて彼は目を開けた。

末文:彼女はこの美しい世界で誰かが幸せに生きられるよう、今日も精一杯願うのだ。

ぱらぽろぷるんぺらぽろぱらぽん

冒頭:僕はこの美しい世界で彼女が幸せに生きられるよう、今日も精一杯願った。

末文:みーんみんみん。みーんみんみん。

真っ青に染まる空の下、あたりには得体の知れない生物の鳴き声だけが響き渡っていた。

嘘つきセミと青空

冒頭:「みーんみんみん。みーんみん。セミですよー!」

真っ黒に染まる空の下、あたりには得体の知れない生物の鳴き声だけが響き渡っていた。

末文:目を開けるとそこには、突き抜けるような青空が広がっていた。

1作目の冒頭と4作目の最後が繋がっていることで全体が円環を形成しています。

4作目は主人公の視点で書かれセミ子は途中で亡くなります。そうすると4作目を含め全体でひとつの作品とする構成は彼女に取りようがなかったものと考え、遺志を継いだ主人公が生前にセミ子が話した構想を基に書いたとするのが妥当ではないか。

以上の説を主張するものであります。

また作中の「吐く」行為に注目した読みも試みたが既に6000文字近くまで膨れあがってしまっているため今回はカットし、気になる人は自分で読んで確かめて下さい。

 

 

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